iPadリリースに際してサービスが開始されたのがiBooks Storeだ。日本でのサービスインは未定だが、アメリカでは既にサービスが開始され、相当数の書籍が販売されている。
iBooksアプリは、iPadの初期起動時(後から環境設定パネルでも設定可能)にUSのiTunes Storeアカウントを設定し、iBooksアプリをダウンロードする。iBooksアプリを起動すると、そのアプリ内で書籍の管理および購入を行う事が可能。価格は$9.99〜で無料の書籍も多く取り揃えてある。現在は、USのみのサービスだが、アプリは多言語化されており、日本語環境で使用した場合、ボタンやメニューの一部は日本語表記される。
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標準状態のフォントと文字サイズ |
フォントおよび文字サイズが変更可能 |
iBooksにはくまのプーさんがプリインストールされており、全文を読むことができる。書籍は、フォントや文字サイズを変更できるほか、何ページ中何ページまで読んだか(今どれくらいまで読んでいるか)を確認もできる。iPadを縦持ちしている際は、片ページ分の表示になり、大きな画面構成で読むことができる。横位置に回転させると見開きになり、ページ全体を見る事ができる。文字は、フォントを使用している(画像ではない)ので、拡大してもスムースで美しい。単語を選択して意味を調べるという事も可能のように思えた。
iPadは、iPhoneと同様に重力センサーが内蔵されており、iPadを横向きにするとアイコンもメニューバーも横向きになる。iPhoneでは一部のアプリのみでできる画面の回転がiPadではOSレベルでできるのは、iPadのデバイスのサイズ、特性によるものだろう。しかし、場合によっては縦位置になっている表示が意図せず横に回転してしまって戸惑ってしまうという事は、iPhoneのアプリを使用している際にも発生した。
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スクリーンロックボタンをONにする |
メニューバーにスクリーンロックのアイコン |
それを防ぐためか、iPadにはスクリーンロックボタンがついている。スクリーンロックボタンをONにすると、画面中央に一瞬ロックアイコンが表示され、メニューバー右上にはロックアイコンが表示される。解除すると、アイコンは消えるので、ディスプレイを見るだけでロックされているかどうか判別できる。画面ロックは、縦位置または横位置のいずれの場合においても行うことができる。
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ロックしない場合iPadの向きにより回転する |
ロックすると画面の向きは固定される |
iPadのみにスクリーンロックスイッチがついたのか、今後iPhoneなどにも装備されるのかは不明だが、iPadにスクリーンスイッチがついたのは、iPadのデバイスとしての特性もあるだろう。iPhoneは、個人的なデバイスであり、手のひらサイズの小型端末という事だが、iPadは大画面で場合によっては人と画面を共有して使用する使い方も想定できる。将来のビジネスシーンでは、iPadに表示されたチェックリストを確認して、サインをしたり、チェックボックスを入れるとか病院の電子カルテの入力デバイスなどの用途として使用する事も考えられる。その際、画面がいちいち回転しては使いにくいだろう。このような際にスクリーンロック機能が活きてくるはずだ。
iPadのハード、ソフト、サービスは、画期的で、発売までまだ時間がある日本においてもこれだけ話題になっている、という事は十分に魅力的であると言えるだろう。多くのiPadを特集、解説する記事でも電子書籍ハードとしての魅力、サービスの可能性が述べられているが、実はそれだけではないように感じた。
iPodが発表された時、iPodは、重いとか大きい、5GBも必要ないなど様々な点でダメ出しをされたのだが、結局は他の音楽プレイヤーも、大容量化が進み、「持ってるCDを全部入れて持ち歩く」は、標準仕様となった。今ではCDではなく、iTunesで買う時代になってしまった。iPod以前は、64MBとか128MBのメモリカードにCDアルバム1〜3枚分の楽曲を入れてMDのように入れ替えて再生していたと言ったら信じられるだろうか?当然、楽曲名などは表示されなかった。また、当時はMDも主流で、MP3プレイヤーは非常にマイナーだった。もちろん、iPod以前にもHDDを搭載してGB単位の容量を持つMP3プレイヤーも幾つか存在していたが、それこそ見向きもされなかった。ちょうどiPad以前の電子書籍リーダーのように。
おそらく、数年の後に、iPadは画期的なデバイスとして急速に普及するだろう。そのポイントは幾つかある。
一つは、電子ブックリーダーとして。これは他の媒体でも多く語られているので詳細はそちらに任せるが、重要なポイントはiBooks Storeにあると思う。または、楽曲のように自分の所有しているドキュメントをiBooks形式で読み込めるようになるかどうかだが、こちらは難しいだろう。いずれにしても、ポイントは、「iPadで小説や雑誌が読める」という事ではなく、「本棚を持ち歩ける」という事だろう。人によっては「図書館を持ち歩く」という人も出てくるかもしれない。現時点においては、読みやすさなど一冊の本の単位ではまだ紙の方が優れている場合があるが、複数の書籍となると断然iPadが有利になる。自分の蔵書を全て持ち歩き、読みたい時に読みたい箇所をすぐに読むことができるとなれば、読書のスタイルが劇的に変るだろう。
もう一つは、これこそがナレッジナビゲーターになりうるのではないかという点だ。ナレッジナビゲーターとはAppleが1987年に作成した「未来のコンピュータ」のコンセプトモデルだ。iPhoneがリリースされたときにも同じような事が言われたが、画面の大きさなどナレッジナビゲーターと言うにはちょっと足りない部分も多かった。しかし、iPadの画面の大きさや処理能力、その他仕様は、ナレッジナビゲーターとしての要件を満たしているように思う。アプリを切り替える事で、様々なデバイスとして活用でき、書籍から映像、音楽、通信も可能で、その他ビジネスやエンターテインメントの端末として活用できるiPadは、将来一人一台が持つデバイスになるのではないだろうか。
これらにより、既存のビジネスも大きく変わる事になるだろう。それはまた、次の機会に述べるとして、そんな可能性を秘めたiPadの日本での発売は、4月末。2010年4月が歴史に刻まれるかどうか是非iPadを手に取って確かめてはいかがだろうか? |