TwitterやWebページ、ブログなどでこのプロジェクトを知ったプロのカメラマン、写真関係者、その他有志のボランティアスタッフが、宮城県山元町で行われている写真洗浄複写作業のために参集した。初日は、作業手順や現地での注意事項などの説明を受けた後、一通りの作業を体験すると言う事で、洗浄(泥掃き/水洗い)〜複写までをグループに分かれて行った。
被害に遭った家などから回収された写真の総数は、実に20万枚以上との事。作業を行う現場の廊下や階段には、処理を待つアルバムや写真が山のように積まれており、容易ならざる状況である事が一見しただけで伝わってくる。また、作業環境や作業内容上、泥などが乾燥して粉塵となったりと人体や精密機器には過酷な状況であった。今回、作業マニュアルなどの書類は、耐久性や可搬性などの都合で、電子化してiPadに入れて持参した。現地では、このような粉塵や雨などから機器を守るために「iPad防水ケース 200-PDA029」のような防水ケースなどに入れて使用し、作業者は、粉塵を吸い込まないよう防塵マスクなどを着用しての作業となった。
■第一工程:泥掃き
最初の行程は、集められたアルバム、写真の中からアルバムの形状を保っている物を選び出し、付着した泥などを取り除く作業。アルバムによっては奇跡的に無傷に近いものから、全てのページに泥や海水、砂などが入り込み、取り除くのが難儀な物、既に腐敗が進んで持っただけでページが抜け落ちてしまう物など様々。アルバムとして体をなしていないものを分類し、それ以外の泥や汚れを落としてゆく作業は、見た目以上の重労働。作業の性質上、屋外での作業となり、汗を流しながら、あれこれ工夫をして泥などをはき落としてゆく。乾燥してこびりついている物や、まだ濡れて強くこすると写真まで痛んでしまう物まで幅広く、決まった手順で効率よく作業するという事ができないのだ。
■第二工程その1:複写
「泥掃き」されて、「アルバム」として処理する物が、ナンバリングされ、複写する部屋に持ち込まれる。比較的無事なアルバムの多くは、表紙が厚く、フィルムで密閉されるタイプが多い。自ずと大切な写真(赤ちゃんの頃の写真など)が多く貼られており、被害が少ない事が確認できた時は、メンバーから「無事で良かったね・・・」という感想が思わず出る一幕も・・・
「アルバム」の体をなしている物は、全て複写に回される。中には、分解して洗浄したいと思われるアルバムも含まれるが、一律に複写され、後日のレタッチに回される。個別の対応をしてあげたいと言う意見も出てはくるのだが、一律の対応には理由がある。震災が3月初旬で、今回洗浄・複写を行ったのが6月初旬。3ヶ月経過し、気温も湿度も上昇している中で、現状を維持する事が困難になっている写真、アルバムが増えてきている。一枚でも、一冊でも多くの写真、アルバムを持ち主に届けるために、迅速なデジタル化が最優先なのだ。
複写は、複写台を使用する方法が最も効率が良いのだが、参加した回では、まだ十分な機材は揃っておらず、三脚に雲台を180度逆に取り付け、垂直下方向を撮影するようにセッティングして、複写を行う方法がとられた。また、現地の電力事情から、照明は使用せず、ISO感度をノイズが出ない最大(1000〜1600)に設定し、カラーバランスはオート、自然光とレフ板を組み合わせての撮影となっている。※後日、複写台の提供があったとの事で、大変嬉しく思います。
撮影されたデータは、アルバムのナンバーとともにデータ管理の担当へと引き継がれる。大量のデータをハンドリングするので、非常に負荷がかかる作業。例えば、MacBook Pro 17inchに、FireWire800のインタフェース付きメモリリーダなどがあれば、より効率的な作業が実現するのではないか、と思えるくらいの分量を1日中、ほぼ休み無く処理している。 |