ノイズキャンセリングヘッドホンは、周囲の環境音を位相反転にて相殺させて静かなリスニング環境を創造するハイテクを利用したヘッドホンである。これまでも多くのメーカが様々な製品を投入しており、ゼンハイザー社もPXC300などのモデルを過去にリリースしている。NCヘッドホンの利点は、騒音の大きい場所でもボリュームを上げずに(大音量にしなくとも)快適に音楽を楽しむことが出来るという事だが、過去の製品には、ノイズキャンセリングを行うとノイズ領域と同じ周波数帯の音楽の部分も抜けた感じになってしまうなどの音質の劣化、ノイズキャンセリングの回路を動作させるためのバッテリーが必要で、バッテリーケースが外付けになってしまう、バッテリー切れの際はヘッドホンとして利用できない、などの利便性とトレードオフで提供されるデメリットもあった。
しかし、この「PXC450」は、バッテリーはヘッドホンハウジング内に収納するタイプで、しかも電池切れの際はバイパスモードで通常のヘッドホンとしても可能。ノイズキャンセリングをONにしても音質が劣化しないという過去に問題となっていたノイズキャンセリングヘッドホンのウィークポイントをことごとく克服した完璧なモデルとなっている。
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キャリングケースを兼ねた収納ケースが付属している。
比較的大柄な筐体だが、折り畳んでコンパクトに収納する事が可能だ。
大きさの割に軽量なので、着けた際に感じる重さや圧迫感は少ない。
密閉型なので、それだけでも遮音性は高い。 |
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未来的でメカメカしいデザインは好みが別れるところ。
大柄な筐体の割には装着感は悪くないが、端から見るとかなりデカイヘッドホンをかぶっている人のように見える。
フィット感は自然でゆったりとした感じで装着できる。
右側のハウジング内に電源やスイッチ類が備わっており、音量の調整やTALK THROUGHボタンなどがある。
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音質的には、平均的な良質のヘッドホンのクオリティを維持しており、ジャンルを問わず平均的に良い音を出してくれていると思う。同社の他のモデルのように得意なジャンルや目的のための音作りというよりもノイズキャンセリングによる劣化の補正に重点を置いているという印象だ。ユニークなのは、他の多くの製品が外の環境音を拾ってノイズを低減しているのに対して、PXC450は、ヘッドホン内部にマイクを設けてハウジング内のノイズを低減するという仕組みになっている。
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ノーマルモードとバイパスモードを切り替え |
単四乾電池をハウジングに内蔵 |
機能的な欠点を克服し、完璧なNCヘッドホンといえるPXC450だが、唯一難点を挙げるとするとその大きさだろう。もちろん、装着感は良く、大きさの割に重すぎる事も無く使用する際には特に問題もない。大きなハウジングは、ゆったりとしたつけ心地にも繋がり、長時間の使用でも疲れにくい。
しかし、その大きさ故に満員電車などの人ごみで使用するには、ヘッドホン本体が接触したりぶつかってしまうのではないかと言う心配もある上に、着けたシルエットが少々異様な雰囲気になってしまう。これで歩いているとすれ違う人などに一瞬ぎょっとした表情をされる可能性がある。新幹線や飛行機の中、サーバルームでの作業などであれば問題は無いだろう。
実売50,000円超の価格は、他社の同様の製品と比較するとやや割高になるが、機能とデザインを考量するとコストパフォーマンスは高い。おそらくBOSEのQuietComfort2/QuietComfort3が実質的な競合となるかと思うが、バイパスモードがあり電池切れの際は通常のヘッドホンとして使用できる点や、TALK THROUGHボタンによる楽曲のミュート機能があり、ヘッドホンを着けたまま会話が可能と言う便利機能分がそのままコストの差となっているように感じられる。価格が気になる人には、TALK THROUGH機能やボリューム機能が無い下位モデルのPXC350(実売40,000円程度)もある。痒いところに手が届いた至れり尽くせりのヘッドホンが欲しかった!とい人にはオススメのノイズキャンセリングヘッドホンだと言える。
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撮影協力:D-Park |